シーメンスEDAとの出会い
シーメンスEDA(当時のメンター・グラフィックス)から仲介者経由で入社勧誘があった2016年、大きなビジネス機会への再挑戦へ心惹かれる想いが募りました。
大学を卒業以来21年余に渡ってIBMに在籍し、日本法人ならびに米国本社にて完成度の高い重厚なビジネス環境に身を置いていました。その頃にもっと野心的で動的で小回りが効いて成長力のより高いビジネスに興味を抱いていた私は、新しい挑戦機会を求めて初めての転職を決意。創業期から成長期に入り始めた英国ザイラテックス(その後シーゲート・テクノロジーズ社が買収)社の日本法人代表、その後、高い競争力で急成長を重ねビジネスモデルのSaaSへの移行期を迎えていた米オートデスク社のAECアジア大洋州事業代表を経験。機動性が高く充実した日々を過ごしつつも、他方では投資規模の物足りなさを感じる場面もありました。
大規模な投資力を有する大きな事業体の中でさえ、自由に活動できる高速成長組織がないか。そんな想いの中で出会ったのはマイク・エロー、現在も続く私の上司で当時の日本法人代表採用の責任者です。実は、採用面接の初期の段階ではシーメンスによるメンター・グラフィックスの買収はまだ未発表。その時点では私の入社意向はまだ強いとは言えません。その後に買収の発表があり、その意義を自分なりに理解。マイクや他の役員と面会を重ねるうちに、この機会が私の希望に合致し、私の経験が最も役に立つビジネス・フィールドに間違いないと確信するに至りました。会社統合の手続きの最中にも関わらず、暖かく迎えてくれた世界中のメンバーに対する感謝の気持ちは当時も今も全く変わりません。
買収が完了した2017年にメンター・グラフィックスはシーメンスのデジタル・インダストリー・ソフトウェア部門の新しいメンバーとなり、日本法人は2021年7月にシーメンスEDAジャパンに社名変更。シーメンスの社会的存在意義、組織能力、成長性、圧倒的な投資力に支えられながら、デジタル・ツイン戦略をリードする当EDA事業はグループの中で最も迅速な意思決定メカニズムを通して最も早い成長スピードで走り続けている。私が入社前に思い描いていた通りの素晴らしい組織です。
EDAビジネスのこれから
長期的な半導体産業の成長は堅調に推移しており、グローバルな産業構造の再編期を経たのち、昨今ではその成長は加速を強めています。データを戦略資源とする時代のニーズと、データの移動・処理・蓄積インフラのコスト・パフォーマンスの劇的向上が両輪となって、半導体の需要が大きく盛り上がっているのです。AIや機械学習を用いた新しく高度なアプリケーション、クラウド・サービスの利用拡大やリモート・ビジネスの普及に伴うデータ・センターでの膨大な需要、関連人材不足や災害も重なって、半導体の設計・生産能力不足が大きな社会問題になる程です。
一方、国内の半導体産業は世界的な産業再編の過程において停滞が続いてきましたが、リーマン・ショックの谷底を経て、今日まさにようやくその長いトンネルから抜け出そうとしています。そして政府のバック・アップもある。半導体産業向けの公的支援パッケージが次々に発表・施行されていますね。背景にあるのは米中摩擦を中心とする国際情勢の変化です。政府は半導体を経済安全保障戦略上の最重要アイテムと位置付けています。半導体は昔よく「産業のコメ」と呼ばれましたが、今では国家や社会全体の情報インフラを支える重要な社会基盤の構成要素なのです。社会の多くの仕組みや制度がデジタル化された現在、家電や情報機器の部品だった半導体は今や社会の頭脳です。
その半導体の開発を支える設計支援ツールがEDA。EDAは大規模化・高密度化が加速する最先端の半導体の設計にも適合する技術革新を続けています。EDAが無ければ半導体は設計不可能です。設計が出来なければ新製品の生産はもちろん、製品の改修さえできません。さらにEDAの高度な技術は当社を含む米国の数社しか保有していません。つまり、希少で価値が高く模倣できない存在として強い市場ポジションを確保しているのです。米中摩擦でEDAの輸出規制がチョーク・ポイントになるのもこのためです。EDAは社会に不可欠な存在であり、今後益々高度な技術を組み込んで発展していく事に疑いの余地はありません。そして国内半導体産業の今後の発展に大きく寄与し続けます。
シーメンスEDAは極めて競争力の高い製品群を核に、最先端の半導体開発に対応する設計技術とエンジニアリング能力をお客様提供し、同業他社より速く力強い成長を実現しています。シーメンスはグループの戦略として、Customer Impact、 Empowered People、 Technology with Purpose、 そして「成長を目指す」Growth Mindsetの4つを掲げています。特に重要なGrowth Mindsetは、シーメンスEDAの社員一人ひとりの成長こそが会社の成長に直結する、という信念です。自らが努力し、自らを磨き、自らの成長を通して、お客様へ価値をお届けし、事業を成長させ、それが更なる自分の成長を促す。そんなサイクルをチーム一同で日々挑戦しています。
シーメンスEDAジャパンの人財採用への想い
前項の通り「成長を目指す」Growth Mindsetの共有が人材採用で一番期待していることです。シーメンスEDAのビジネスは、個人の成長こそが会社のビジネスを決定づけるからです。
Growth Mindsetを備える為に組織運営上で信条としているのは、Transparency(透明性):意思決定の透明性であり正直で素直であること、これは正しい事業判断と効果的な組織内チーム・ワーク構築の実現に必要不可欠な行動規範。次にSense of Urgency(切迫感):現場の危機意識を常にもって迅速に行動することですね。そして、Accountability(結果責任):覚悟を持って本気で取り組み結果責任を負う気概をもつこと。シーメンスが全社行動規範として掲げているオーナーシップ・カルチャーと共通する考え方です。Responsibility とは単に自分の役割・職務を指す言葉ですが、Accountabilityは覚悟や約束に対してその結果に責任を持つという考え方です。自らでよく考え、戦略を練り、計画を立て、行動し、そして結果に責任を持つ。要件を固め、論理的、物理的に設計し、検証し、実行してゆくまさにEDAで半導体を設計するのと同様に、ビジネスを設計・検証し、実行し、チームをリードして結果を創り出していく姿勢や能力を重んじています。
シーメンスEDAジャパンはそのような想いで人財採用、評価。育成を行っています。もちろん今までお話しした事を完璧に実行できる人財がいるとは思っていません。勿論私も含めてです(笑)。ただし、私たちの想いや考え方に共感し、その想いに向かって一緒に努力していただける人にとってはベストな機会を提供できる会社だと思っています。プロフェッショナルとしてのスキル・アップ、キャリア・アップが可能な機会は豊富かつフェアにありますし、今後の人生に必ず役に立つと思います。営業や技術活動に必要なスキルを習得するにとどまらず、個人として成長し、人生を豊かにするチャンスを提供する場・手段のとして当社を利用するくらいの気持ちで私たちのチームに合流いただきたいですね。実際、一定の経験を積んでから別の会社へ、次のステップに進んでいく人も多くいます。ここは個人の挑戦を可能にするための基礎や経験を提供できる場である、と私は信じています。
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土田 由紀夫(つちだ・ゆきお)
シーメンスEDAジャパン株式会社 代表取締役社長
2017年にメンター・グラフィックス・ジャパンに入社し代表取締役社長に就任。EDA営業部門トップのマイク・エロー直属メンバー。 本社VPとして日本のEDA事業を統括。
趣味はアウトドア・スポーツ、城巡り、飲食。最近はじめたことは乱読。